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広島地方裁判所 事件番号不詳 決定

被告人 少年 B(昭一六・六・二八生)

主文

本件を広島家庭裁判所に移送する。

訴訟費用中証人Cに支給した分は被告人の負担とする。

理由

本件公訴事実の要旨は

被告人は少年であつてDと常に行動を共にして、いわゆる不良少年として附近の少年等から畏れられていたものであるが、

一、昭和三四年五月二日頃、広島県○○郡××町△△△△バス停留所附近において、バス待合せ中のE(昭和一八年一月一〇日生)、F(昭和一八年二月一二日生)に対し、「何をじろじろ見るんなら」と云いがかりをつけ、Fの顔面を手拳で一回殴りつけ、更にEの顔面を手拳で殴打し、腹部を膝で突き上げる等して、もつて右両名にそれぞれ暴行を加えた

二、Dと共謀のうえ

1  昭和三四年五月初旬頃、広島市三篠本町四丁目一七六六番地G方附近に同人の子供H(昭和二〇年一月一〇日生)を呼び出し、同人に対し、金員を要求し、同人から持つていないと断られたので更に「家の物を持つて来い。ジヤツクナイフで突かれるのと金を持つて来るのと、どつちがええか」と云つて、若しその要求に応じなければ同人の身体にどのような危害を加えるかも知れない旨告げて同人を畏怖させ、よつて同人と共に同人方に到り、同人の母I子から右Hの被告人等に対する借用金返済名下に現金一、〇〇〇円の交付を受けてこれを喝取した。

2  同日頃、同所△△△番地J(昭和一七年一月一日生)の自宅附近に同人を呼出し、金を貸せと要求し、若しこれに応じなければ、いつどのような危害を加えるかも知れない旨暗示して同人を畏怖させ、よつてその場で同人から現金一、〇〇〇円の交付を受けてこれを喝取した。

3  同月五日頃、同町西原藤川木工所前附近路上において、K(昭和一九年三月二一日生)に対し金を貸せと要求し、前同様の方法をもつて同人を畏怖させ、よつてその場で同人から現金一、五〇〇円の交付を受けてこれを喝取した。

4  同月六日頃、広島市楠木町崇徳中学校正門附近において、L(昭和一六年七月二八日生)に対し、同人がMを殴打したことに因縁をつけ、「Mをこつぱに叩いたろう、Mに治療代二、〇〇〇円出せ」と要求し、若しこれに応じないときは、同人の身体にどのような危害を加えるかも知れない態度を示して同人を畏怖させ、よつて翌七日頃同町四丁目昭和染工場西側路上において、同人から現金一、〇〇〇円の交付を受けてこれを喝取した。

5  同月七日頃、前記××町同町役場前附近路上において、N(昭和一七年七月二〇日生)に対し腕時計を貸せと要求し、若しこれに応じなければ同人の身体にどのような危害を如えるかも知れない態度を示して畏怖させ、よつてその場で同人から腕時計一個(時価約二、〇〇〇円相当)の交付を受けて、これを喝取した。

6  同月中旬頃、広島市横川町国鉄可部線横川駅便所裏において、O(昭和一七年一月三〇日生)に対し些細なことに因縁をつけて、金員を要求して断られたのでその顔面を手拳で殴打し、次いで同人を同町三丁目第二オールパチンコ店裏に連行し、同所でDにおいて更に○の顔面を手拳で殴打して、その要求に応じなければ更に暴行を加えるような態度を示して脅迫したが他人から制止されたため金員喝取の目的を遂げなかつた。

7  同月二〇日頃の午前五時三〇分頃、前記××町△△○○○番地のM(昭和一七年一二月二一日生)の自宅附近に同人を呼出し、同人に対し二、〇〇〇円作れと要求し、若しこれに応じなければ同人の身体にどのような危害を加えるかも知れない旨を暗示して同人を畏怖させ、よつて同日午後二時頃広島市三篠本町四丁目バス終点附近路上でDにおいてMから現金一、〇〇〇円の交付を受けてこれを喝取した。

8  同月二四日頃、前記××町△△△○○小学校講堂附近において、両名でP(昭和一四年三月一二日生)に対し、いきなり手拳をもつて顔面等を殴打し、「こらえてやるから金をこしらえ」と要求し、若しこれに応じなければ更に同人の身体に危害を加えるかも知れない態度を示して同人を畏怖させ、よつて翌日同町南下安五五〇番地の同人方において同人から現金二、〇〇〇円の交付を受けてこれを喝取した。

9  同月二五日頃、広島市横川町三丁目お好焼屋朝倉方裏空地において、Q(昭和一八年三月一日生)に対し些細なことに因縁をつけ、時計を貸せと要求し、若しその要求に応じないときは同人の身体に危害を加えるかも知れない態度を示して同人を畏怖させ、よつてその場で同人から腕時計一個の交付を受けてこれを喝取した。

10  同日頃の午後七時頃、前記××町○小学校倉庫内にR(昭和一六年三月二日生)を連行し、両名で殴る蹴る又は野球のバツトで殴打する等して金を貸せと要求し、若しこれに応じなければ更に同人に暴行を加えるかも知れない態度を示して同人を畏怖させ、よつて同日午後九時頃、同町フマキラー工場近くの橋のところで同人から現金二、〇〇〇円の交付を受けてこれを喝取し、且つ右暴行により同人に対し治療約二週間を要する頭部挫創等の傷害を負わせた。

11  同月二六日頃の午前七時頃、広島市三篠本町四丁目一、六八七番地のS(昭和一九年五月一五日生)の自宅において、同人に対し金を貸せと要求し、同人から「ない」と断わられたので更に上り口に置いてあつたスパイク靴に目をつけて「そのスパイクを貸せ」と要求し、若しその要求に応じなければ同人の身体にどのような危害を加えるかも知れない旨暗示して同人を畏怖させ、よつてその場で同人からスパイク靴一足(時価約七〇〇円相当)の交付を受けてこれを喝取した。

12  同日頃の午後一〇時頃、前記××町△△△カトリツク教会裏路上において、T(昭和一六年四月七日生)に対し時計を貸せと要求し殴る蹴る等の暴行を加え、若しその要求に応じなければ更に同人に暴行を加えるかも知れない態度を示して、同人を畏怖させたが、同人が拒みつづけてその場を逃げたため、喝取の目的を遂げなかつた。

13  同日頃の午後一〇時頃、同町西原安川土手にU(昭和一六年一二月二日生)を呼び出し、同所で同人に対し金員を要求したが断わられたので、いきなり同人の右腕を捻じあげ、更に時計を貸せと要求し、「お前が夕べのことを知つとろうが、Rをバツトで殴つたことを」と云つて、若しその要求に応じないときは更に同人の身体に危害を加えるかも知れないことを告げて同人を畏怖させ、よつてその場で同人から腕時計一個(時価約三、〇〇〇円相当)の交付を受けてこれを喝取した。

14  同月二七日頃の午後一時頃、同所に前記K(昭和一九年三月二一日生)を呼出し、同人に対し「まとまつた金を作れ、昨日もRという奴を野球のバツトで殴つて金を出させた、金を出すのとバツトで殴られるのとどつちがええか」等と云つて脅迫して、同人をタクシーに乗せて家人不在中の同人方に赴き同所において引続き同人に危害を加えるような態度を示して脅迫し、その反抗を抑圧したうえ同人の父○○等の所有する電気コタツ他二七点(時価合計約一〇、七〇〇円相当)及び現金三〇〇円位を持去り、もつて電気コタツ等を強取した。

15  同日頃の午後六時三〇分頃、広島市横川町三丁目横川銀映東側空地にW(昭和一七年八月一七日生)を連行し同所で同人に対し、「五、〇〇〇円位どうにかせい」と要求し、若しこれに応じなければ同人の身体にどのような危害を加えるかも知れない態度を示して同人を畏怖させ、よつて同日午後七時頃、同所において同人から衣類三点(時価約三、〇〇〇円相当)の交付を受けてこれを喝取した。

三、D・檜山某と共謀のうえ

1  同月二六日頃の午後九時五〇分頃、前記××町△△△△土手にV(昭和一五年九月二九日生)を呼出し、同人に対し「五、〇〇〇円貸せ」と要求して同人の腹部を手拳で殴打して、若しその要求に応じなければ更に同人の身体に危害を加えるような態度を示して同人を畏怖させたが、同人が拒み続けたので金員喝取の目的を遂げなかつた。

2  同日頃の午後一〇時頃、同町△△△△△△番地の六のX(昭和一七年三月七日生)の自宅附近に同人を呼出し、同人に対しカメラを貸せと要求し、若しそれに応じないときは同人の身体に対し、どのような危害を加えるかも知れない旨暗示して同人を畏怖させ、よつてその場で同人からカメラ一台(時価約七、〇〇〇円相当)の交付を受けてこれを喝取した。

四、D・Yと共謀のうえ、同月二八日午後七時三〇分頃、広島市大芝町新庄神社附近を自転車で通行中の店員C(昭和一五年一二月三日生)を呼び止め、同人を同神社境内に連れ込んで取囲み「金を出せ」と要求し、若しそれに応じなければ同人の身体にどのような危害を加えるかも知れない態度を示して同人を脅迫し、同人から現金約五、八〇〇円の交付を受け、続いて更に金を出せと要求し、DにおいてYに向つて「刺しちやるけえ、刺しを出せ」と云い、Yにおいて自己のズボンのバンドのあたりに手を入れ刃物を出すような恰好をして右Cを脅迫し、よつて同人の反抗を抑圧したうえ、同人の所持金約一〇、九〇〇円を強取し、その場で同人に対し殴る蹴る等の暴行を加えて逃走し、同暴行により同人の右顔部に全治まで四日間を要する打撲傷を与えた。

ものである。

というのであつて、右の事実は本件記録に綴つてある各証拠によつて明らかである。

そこで被告人の経歴について考察してみると、被告人は父Z、母A子との間の四人兄弟中の第一子として生れ、同二三年四月△△小学校に入学、同二九年三月同校を卒業し、同年四月××中学校に入学した。その間知能が低いため、成績が悪く常にクラスの中で下位にあつたが、ことさらに学業を怠り学校を嫌うようなことがなかつた。ところが被告人は同三〇年頃、Dが××中学校に転校して来て、同人と親交を結ぶようになつて以来、急激に素行が乱れ、同人等と不良グループを形成して、同級生をいじめ、学校の内外において暴行・恐喝を働き、学校においても問題児として注目されるようになり、喫煙をはじめ、夜遊び・外泊をすることが多く、同三一年三月同校卒業後も同人等と暴行・恐喝を繰返し、遂に同三三年二月二七日広島家庭裁判所において、広島保護観察所の保護観察に付する旨の決定を受け、同保護観察所の保護観察を受けるようになつたが、相変らず友達と一緒になつて非行を続けていた。そのうちに被告人は担当保護司高田謙三の紹介で同年九月頃から○○工業所で働くことになり、以後比較的真面目に勤めていたところ、同三四年二月頃少年院を仮退院して来た前記Dと交際するようになり、再び労働意欲を失い本件犯行を繰返すに至つた。

よつて被告人の処分について考えるに、本件犯行及び被告人の経歴並びに環境を考え合せると被告人の犯罪的性格が相当進んでいることが看取され、保護処分によつて被告人の更生を期待することに危惧の念を抱かないわけではないが、一方犯行の態様をみると暴行の事実を除きすべてD等との共犯によるものであり、被告人の犯罪行動にあまり積極性が認められず本件犯行が被告人の雷同的性格に起因するものと思われるので刑事処分に付すより寧ろ適切な保護処分により被告人から不良交友を完全に断ち切り、その性格を矯正し、被告人に更生の道を歩ませる方が、被告人の将来のために妥当な方法であると認める。

よつて被告人を保護処分に付するのを相当と認め、少年法第五五条に従つて本件を広島家庭裁判所に移送することにし、訴訟費用は刑事訴訟法第一八五条により証人Cに支給した分を被告人に負担させることにする。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小竹正 裁判官 渡辺宏 裁判官 長谷喜仁)

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